第0章 漆黒の宝石

それは遠い遠いとても未来のお話
上も下も左も右もない
まぶしくも真っ暗闇でもない
そんなぽっかりと空いた「場所」だった

「場所」というにも
無理があるかもしれない
どのくらい広くて
どのくらいせまいかすら わからない
時間でさえも狂った針を
ただただ回しつづけるだけだった

或る日 そんな「場所」が動き始めた
どろどろと悪夢のようなだった
黒い塊がうごめくたびに つよい風がおこり
光はどんどんと
闇にすいこまれてしまうようだった
うごいたからわかった
その闇が うごくものだということを
その闇が どのくらいの大きさをしているのかを

黒い世界のなかでその塊は
何かを伝えようとしているようだった
おおきくのびをしたり
ちいさく縮こまったりして
そのあと大きなくしゃみをして
その「場所」が一瞬にしてふくらんだ

その石に
無数のちいさな石が寄り添った
まるで誕生を祝うように
ちいさな石たちは
波のようにその「場所」に漂った

遠くの光る星まで 石の行列がつづいて
その世界は 光り輝いた。

やがてこの石は まん丸く冷え固まり
その中に大きな海ができて
最初の生命「カソケキモノタチ」が
生まれる星となった

このものがたりから 遥か未来
SIONE新暦元年のことである